US mini logo | 留学をお考えの方へ | 出願する方へ | 教育機関・企業の方へ |

大学について

体験談

国際機関で人間の安全保障に携わるために!サセックス大学で開発学を学ぶ  第2回 IDSのカラーと学びの意義

安達 茉莉子さん

安達 茉莉子さん
留学分類:大学院留学
専攻名: 開発学 MA in Development Studies
留学期間:2012年10月〜2013年9月
beoの留学サポート利用して、現在留学中

世界屈指の開発学研究機関として国際的に高い評価を得ているサセックス大学 University of Sussex。卒業生は国際機関やNGOなどで活躍しています。将来は国際機関で「人間の安全保障」に携わりたい、と防衛省を退職されてサセックス大学 MA in Development Studies に留学される安達さんからの現地レポートです。

本当にあっという間に最初のterm(1年間のMAコースの実に1/3!)が終わり、ようやく肩の力も抜けてきた頃、といったところです。
結論から言うと個人的にはとても大当たり、よかったよかったといったところで、IDSにフィットして、毎日楽しく充実した生活を送っています。

第2回のレポートは遅くなってしまいましたが、IDSはどんなところ?という点に関して個人的主観を述べて行きたいと思います。
「1.IDS という機関」×「2.IDSのカラー」×「3.MAクラスメート」という3点を中心に書いていきたいと思います。

1. IDS (Institute of Development Studies) という機関

● IDS 〜University of Sussexといいつつ独立した建物〜

IDSの建物はサセックス大学の敷地内にありますが、IDS自体は独立した機関で教授陣もIDS所属の教授になります。
ただしMA programme(修士課程プログラム)はサセックス大学との共同プログラムという扱いのため、大学院生達は同時にsussexの学生でもあります。

IDは別々に発行され、基本的に図書館も使用可能です。
ただし、IDSにはカフェ(Bar)、ラウンジ、開発学の図書館、個人ロッカー、電子レンジ、お湯、なんなら電子ピアノと何もかもそろっているため正直生活はIDS内で完結することも多く、個人的には帰属意識はIDSになるようです。(「あの人、俺はIDSだぜって鼻にかけてるよね」と揶揄する声も聞きますが・笑)

ここから生まれる"Sense of Community"はIDSで学ぶ事の最大の強みでもあると感じます。

学生同士のヨコの繋がり、教授陣との縦の繋がり、そういったソーシャルキャピタルはとても厚いものになりますし、仲間意識といった点でもプラスに働いているように感じます。
adachi2_1.jpg
(写真)IDSの建物。ついこもりきりになります

adachi2_2.jpg
(写真)「たまり場」となる交流の場が随所随所に。ここから意見交換がうまれます。ピアノもあります。

● 第一線で発信を続ける研究機関にMA(修士課程)があるということ 

IDSは研究機関なので、メインミッションは研究・発信です。
IDSの教授は自分でfund(資金)を引っ張ってこなければいけないそうで、怒濤の競争原理のもとに(?)第一線で発信している人ばかりです。
研究内容的にも非常にcritical(批評的)でありつつrelevance(正当性)を問い続けるような方が多いです。
教育は二の次(!)ということが言いたいわけではなく、そういう環境で学べることは個人的にとても有意義であると考えています。

IDS最大の魅力(その2)として、こうした教授達と学生との垣根が非常に低い事があげられます。

一番の接点は毎週何かしら常に開催されているセミナーです。

教授たちがプロとして議論を交わしている様はとても刺激的ですが、学生もなんなりと混じってそれぞれの経験や知見から発言し、同じ場所で議論を行うことが教授側から奨励(期待?)されています。
入学セレモニーで「皆さんはこれから1年間、学生という立場になりますが、皆さんは実際のところ、実務経験を持つdevelopment practitioner(実践家)ですよね。IDSにとって'学生'を受け入れる最大のメリットはそこにあります」という発言がありました。

このように、公式の授業外での学びが非常に大きいということがIDSでMA を行うことの魅力だと思います。

adachi2_3.jpg
(写真) ロバート・チェンバース教授主催のワークショップ。
「地べた」派代表。彼に魅せられてIDSを志す人も多いのではないでしょうか。

2. カラー

最初に「大当たり」と書きましたが、正直なところIDSのvisionと自分自身が合うかどうかがとても大きかったと思います。
IDSのカラーを書こうと思いますが、特にこのあたりは私見であることをお断りしつつ、こういう見方も存在するという風に受け止めて頂ければ幸いです。

● 政治性: 戦略的中庸?radical(急進的)を標榜しつつ影響力を失わないこと

IDSはmost radicalという一般認識があるのは周知の通りですが、中にいると本当にそう感じます。
一方で、本当の本当にradicalな学生達からすれば、「IDSは中庸だよね」という声も聞きます。
個人的にはIDSはpeople-centered(人間主体), human rights-oriented(人権重視), cultural relativism(文化相対主義)という点では一致しているのかな、と感じています。

一方でそうした主義を貫いて実現していくためには現実のpoliticsも踏まえてギリギリの対話を続けて行かなければならないのかと思います。

そうしたengagingな姿勢は前述のセミナーでの議論やIDSのPolicy Brief(方針)やWorking Paper(研究成果報告書)を見ていると特に感じます。

 ● informality:のびのび

多くのクラスメートも最初困惑していましたが、IDSでは教授をファーストネームで呼びます。
ロバート・チェンバース教授でも同じです(参照:上の写真)。

こうした象徴的な点に始まり、サセックス大学のキャンパス自体が自然豊かな感じなので、感覚としてはハイヒールを脱ぎ捨て(埋まるので)野原を自転車で駆け回るような場所です。

また、社交に関してもIDSが開催するパーティーはラテンアメリカ系のIDS Barオーナーの影響か、ラテンミュージックしかかからないようなダンスパーティーです。
以前クラスメイトが他大学の友人を訪ねた時に「試験を受けるのに指定の服装がある」「パーティーもドレスアップしたカクテルパーティー」という話を聞いたようで、それを耳にしたクラスメートの多くが「oh...俺無理だ・・・生きて行ける気がしない」という感想を述べていたのが印象的でした。

まあこれも好きずきでしょうし、Personal Statement(志望動機書)に「ラフでカジュアルな校風が好きです」と書くわけにも行かないと思うので余談ですが、これも根底には「地べた」を好むIDSカラーがあるのかな、という気がします。

● cultural relativism (文化的相対主義)

9月の終わり頃にacademic writing能力を見るために成績には影響しないショートエッセイを提出しました。

惨憺たる結果でしたが、担当教授とのミーティングで「これは西洋のアカデミズムによる評価であって、あなたが育ってきた文化のアカデミズムと全く違うものということを理解して、落ち込まないでね。西洋のアカデミズムもまたculturally constructed(西洋という文化によって形成)されたものということを忘れないでね。」と言われました。

最初は「そんなIDS以外で生きて行けなくなるような優しい言葉を・・・」と最初は思いましたが、後々、恐らくこれもIDS教育のビジョンの一貫なのだと思いました。
卒業して外に出た時に、ethnocentrism(自民族中心主義)を是正するように行動してほしいという思いの現れなのかと勝手に解釈しています。

● interdisciplinary (学際性)

IDSに短期滞在されていた日本人研究者の方に、「IDSの強みは地域研究・歴史・文化人類学・政治学・経済学などなどが本当によく混じっていることだと思う」と聞いた事があります。

よく学際的研究と言いつつ研究者同士の行き来がまったくない状態もあるそうですが、研究者の目から見てもIDSはそこがうまく融合しているとのこと。
開発学は人間の人工的行為であり、答えのない、常に多角的な視点で批判しなければならない学問であると思います。

修論においてもそうした学際的アプローチを実践できる環境にあることは有難いと思います。  


3. クラスメイトに学ぶ

 そんなIDSコミュニティの仲間達。今年は例年より少なく約100名。
いつもは大体150名程度はいるそうです。
イギリス・ヨーロッパ・アメリカ系と、いわゆるglobal south(南半球諸国)、南アジア、アフリカ、ラテンアメリカ系はそれぞれ1:1くらいでしょうか。日本人は10人くらいです。
年齢は20代後半?30代全般・40代が多いですね。

前述しましたが合格要件に「関連する職務経験1年?2年」という項目があることもあり、大統領の補佐官をやっていたような人から、事務次官補から、NGO経験者から、現職の官僚から、活動家から、色んな人達がいます。

まあ天才や「未来の大統領」「歴戦の活動家」みたいな人ばかりゴロゴロしているわけでもないと思いますが、そうはいいつつとにかく経験豊富な人が多いです。

一方で、「関連職務経験」はボランティアやインターン経験なども含むようで、かなり柔軟に考慮されているみたいなのでチャレンジを諦める必要は全く無いと思います。

adachi2_4.jpg
(写真)ワークショップの風景その2

長くなりましたが、「IDSがどんなところか」印象を述べさせて頂きました。

大学院選び、マッチングがとても重要であると感じています。

自分と全く違う意見の中で自己を研ぎすませ、不和や違和感から学んで行くこともとても大事な事ですが、同じ方向を向いている人達と切磋琢磨して高め合って行く時間、というのもなかなか人生で無いものだと思う、と研究者の方に言われ本当にそうだな、と思いました。

こうした点で同じものに顔をしかめ、同じもので心が高まるのを感じるIDSにフィットできた事は本当に幸運と感じています。

大学院選びの一助になれば幸いです。

こうした気風が対学生向け教育レベルでどのように落ちてくるのかということは、次回お勉強編(仮題)で書きたいと思います。